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HCD-Netフォーラム2024:
デザインと倫理
開催レポート
11月30日、12月2日の2日間のHCD-Netは、機構外への発信・機構外とのコラボレーションを主眼としてHCDフォーラムを開催しました。本年はHCD研究発表会と同時開催とすることで、多くのHCDにおける現在の取り組みと、未来にむけてアクションすべきことを掛け合わせて考える貴重な機会となりました。
※順次公開いたします
●1日目
◆1-2.フォーラム企画1:アクターズマップ体験----------
■登壇者
・峯村 昇吾氏(造形構想株式会社)
■テーマ
『システミックデザインの手法:アクターズマップ』
■レポート内容
システミックデザインは、複雑な社会課題や組織内の問題に対して、システム全体を俯瞰しながら包括的な解決策を設計するアプローチです。システムに関わる全ての参加者(アクター)を可視化し、それぞれの関係性や相互作用を明確する「アクターズマップ」を作成していきます。このアクターには、組織や個人などの人間だけでなく、技術、環境要因、政策といった人間以外の要素も含まれます。
システミックデザインの概要の講義の後、アクターズマップを作成する実践的なワークショップを実施。オンラインホワイトボードツール「miro」を使用してアクターズマップを作成しました。システム内に存在する多様なアクターを特定し、それらの相互関係について深く議論することで、複雑なシステムの構造や課題への理解を深めるセッションを行いました。
◆1-3.メイン企画:デザインと倫理・基調セッション----------
■登壇者
・水野祐氏(弁護士):「法とダークパターン」
・長谷川敦士氏(HCD-Net副理事長):「ダークパターンを超えるデザイン」
・花井陽子氏(KDDI株式会社)
・パネルディスカッション:話題提供者3名による
・モデレーター:井登友一氏(HCD-Net副理事長)
■テーマ
『デザインと倫理・基調セッション』
◆1-4.フォーラム企画2:インクルーシブデザイン体験ワークショップ:視覚障害リードユーザーとの共創 ----------
■登壇者
・タキザワケイタ氏(PLAYWORKS株式会社)
■テーマ
『インクルーシブデザイン体験ワークショップ:視覚障害リードユーザーとの共創』
■レポート内容
本企画ではPLAYWORKS株式会社のタキザワケイタ氏にご登壇いただき、「視覚障害」をテーマにインクルーシブデザインについての学びと実践、ブレインストーミングの3部構成で体験ワークショップを開催しました。
実践パートでは「白杖歩行」体験と「音声ガイド」体験のどちらかを参加者が選び、視覚障害リードユーザーと共に体験することで、より自分事として視覚障害について学ぶことができる構成になっていました。また、セッション後半のブレインストーミングパートでは視覚障害リードユーザーとの共創を実践しました。視覚障害リードユーザーと会話を重ねながらアイデアを検討するなかで、参加者も多くの学びを得ているようでした。
■1-5.理事会企画2:HCD-Net AWARD受賞者セッション ----------
2024年11月30日-12月1日に開催された「HCD-Netフォーラム2024」内で、HCD-Net AWARD受賞者セッションを開催しました。
2023年度に開催したHCD-Net AWARDの受賞者の中から3組の方に登壇していただき、HCD実践事例やナレッジを共有していただきました。
プログラム
セッション① 優秀賞:迷わないショッピングモールのサインデザイン
NTTテクノクロス株式会社 占部 舞氏、大野 健彦氏
ショッピングモールで行った認知特性の調査から、その結果を用いたサインのデザインまで非常に高度な取り組みの内容についてご共有いただきました。
セッション② 優秀賞:学生を対象としたUXとウェブアクセシビリティの基礎講座実施によるESG活動
株式会社SmartHR 桑野 絵維子氏、後藤 拓也氏
ESG活動として行われているUX、ウェブアクセシビリティの基礎講座活動について、セッション内でも簡単なワークや学生さんが受講された様子の動画を交えてご共有いただきました。
セッション③ 審査員特別賞:HCD人材強化と社内浸透のための仕組みづくり
ソニーグループ株式会社 寺山 晶子氏
HCD人材強化のための教育プログラム、認定制度といった仕組みづくりについて、その背景やどのように社内浸透していったのか含めてご共有いただきました。
各セッション後半の質疑応答ではオフライン会場、オンライン会場ともに多くのご質問をいただき、積極的な意見交換、ナレッジの共有があったのではないかと思います。
HCD-Net AWARD 実行委員会では、今後も人間中心設計分野での優れた取り組みを表彰・共有してまいります。今年度は作品募集・表彰をしておりませんでしたが、来年度からまた作品募集・表彰をしてまいりますので、ぜひご応募いただければ幸いです。
●2日目
◆2-1.フォーラム企画3:点字ブロックを使ったゲームで体感! インクルーシブ・シンキングをインストールしよう ----------
■登壇者
・小坂 正史氏(富士通株式会社)
■テーマ
『点字ブロックを使ったゲームで体感! インクルーシブ・シンキングをインストールしよう』
■レポート内容
このワークショップは、点字ブロックの上を白杖をつきながら歩く視覚障害体験ゲームと、視覚障害者や聴覚障害者との対話、最後に講師の小坂氏による「インクルーシブ・シンキング」の講演を聴く3部構成で開催しました。
講師の小坂氏は自身が生まれつきの聾者で、手話通訳者を介しながらスムーズなファシリテーションで進行しました。参加者はインクルーシブ・デザインの本質である「当事者との対話」と「障害の疑似体験」を通し、障害の社会モデルと医療モデルが存在することや、合理的配慮についてディスカッションしました。
受講後は、点字ブロックや音の鳴る信号機がどこに設置されているか意識したり、社会の障害について、違和感をもって観察できるようになっていました。
◆2-2.フォーラム企画4:「デザインと倫理」を考える ----------
■登壇者
・基調講演①:谷口 恒氏(株式会社ZMP)
・基調講演②:mayu nakamura氏(Ustwo Tokyo K.K.)
・ライトニングトーク①:神谷 壮真氏(株式会社グッドパッチ)
・ライトニングトーク②:亀田 重幸氏(ディップ株式会社)
・ライトニングトーク③:國光 俊樹氏(株式会社Algomatic)
・ライトニングトーク④:入江 眞氏(株式会社野村総合研究所)
・モデレーター:秋野 比彩美氏(株式会社グッドパッチ)
■テーマ
『「デザインと倫理」を考える 講演・LT・車座ディスカッション』
■レポート内容
基調講演2名とライトニングトーク4名の総勢6名が登壇した本企画では、それぞれの内容に聞き応えがありつつ、発表間でリンクする部分も見受けられました。どの発表も非常に学びが深く、総じて「我々はこのテーマとどう向き合うべきなのか」を考えさせられるセッションとなりました。
前半、谷口氏からは人とロボットやシステムが互いに協調しあう為の様々な技術の工夫、nakamura氏からは近視眼的になりがちなペルソナ手法をよりインクルーシブなものにする為の活用試行を紹介いただきました。
後半の車座ディスカッションでは、基調講演の講師2名を囲み、参加者の皆さまと講演テーマについて議論を行いました。「インクルーシブなペルソナ」をテーマにしたチームでは、ビジネスのどのフェーズで「インクルーシブデザインを取り入れるべきか」という議論の中で「B Corp認証を取得することを前提にビジネスを構築し、それ自体を競合優位性として活用する」など、各所で始まる新しい取り組みについても取り上げられました。
これらを素早くキャッチアップするためには、グローバルなデザインコミュニティでの情報収集が欠かせない、という意見も出され、明日から実践可能なアクションプランを持ち帰られた参加者も多く見られました。